映画『死刑にいたる病』の判定は「実話ではない」です。原作は櫛木理宇によるフィクション小説であり、特定の実在事件を元ネタとした作品ではありません。
ただし、連続殺人という題材や阿部サダヲの迫真の演技から「実話では?」と検索する人が後を絶ちません。
この記事では、実話ではないと判定できる根拠を整理し、なぜ誤解されるのか・ネット上のモデル説についても検証します。
死刑にいたる病は実話?結論
- 判定
- 実話ではない
- 根拠ランク
- C(原作・記録)
- 元ネタの種類
- なし
- 脚色度
- ―
- 確認日
- 2026年4月
映画『死刑にいたる病』は、櫛木理宇の同名小説(旧題『チェインドッグ』)を白石和彌監督が映画化したサスペンス作品です。公開情報ベースでは本作が実話に基づくという根拠は確認できず、判定は「実話ではない」です。主人公の連続殺人犯・榛村大和をはじめ、登場人物や事件設定はすべてフィクションとして構築されています。
本記事は公開されている情報をもとに編集部が独自に検証したものです。新たな情報が確認された場合、内容を更新することがあります。
なぜそう判定できるのか【根拠ランクC】
原作がフィクション小説であることが確認でき、映画にも実話ベースの表記がないため、根拠ランクはC(原作・記録から判定)としています。
本作の原作は、櫛木理宇が2015年に刊行した小説『チェインドッグ』(光文社)です。2017年10月にハヤカワ文庫JAから『死刑にいたる病』に改題のうえ文庫化されました。櫛木理宇はフィクションの犯罪小説・サスペンス小説を手がける作家であり、本作も完全な創作として発表されています。
映画の公式サイトや配給会社クロックワークスの資料においても、「実話に基づく」の表記はなしです。映画の宣伝・プロモーションでは一貫して「櫛木理宇の小説を映画化」という打ち出しがなされており、実在事件との関連は一切言及されていません。
白石和彌監督は『凶悪』『孤狼の血』など実在の事件を題材にした作品も手がけていますが、本作については実在事件との関連を示す発言は確認されていません。映画のパンフレットや公開時のインタビューにおいても、実話ベースであるという言及はありません。
映画のプロモーション資料やプレスリリースでも、「白石和彌×阿部サダヲ×岡田健史(現・水上恒司)」というキャスティングの話題性を軸に宣伝されており、「実話ベース」という文脈での訴求は行われていません。
実話ではないと考えられる理由
原作・映画クレジット・作品設定のいずれにおいても、実話との接点なしです。
まず、原作は櫛木理宇による完全な創作小説です。作品の中心となる連続殺人犯・榛村大和(はいむら やまと)は架空の人物であり、特定の実在犯罪者をもとに造形されたという公式情報は存在しません。榛村は「ベーカリーの店主」という表の顔を持つ設定ですが、これに直接対応する実在の事件は確認されていません。
物語の舞台設定もフィクションです。作中で描かれる事件は、24人の若者が被害に遭うという大規模なものですが、日本国内でこれに該当する実在の連続殺人事件は確認されていません。事件の規模や犯行パターンは小説としてのインパクトを重視した創作と考えられます。
さらに、主人公の大学生・筧井雅也(かけい まさや)も架空の人物です。孤立した大学生が死刑囚の巧みな話術に引き込まれていくという関係性も、実在の事件から着想を得たという公式情報はなく、サスペンス小説としての創作と考えられます。
映画の脚本を担当した高田亮は、原作小説をサスペンスとして再構成しています。原作の物語構造自体が「信頼できない語り手」を軸にした純粋なミステリーであり、実話をベースとする必然性がない作品です。
ではなぜ「実話」と誤解されるのか
完全なフィクションであるにもかかわらず「実話では?」と検索される背景には、複数の誤解要因が重なっています。
第一に、連続殺人犯の描写がきわめてリアルである点です。榛村大和は24人もの若者を殺害した設定でありながら、パン屋の温厚な店主として振る舞い、接触した人々を魅了するカリスマ性を持っています。こうした「表の顔と裏の顔」を持つ犯罪者像は、実在の犯罪者を連想させやすい構造です。
第二に、阿部サダヲの演技のインパクトが挙げられます。温かみのある笑顔と冷酷さを同居させた演技が「本当にこういう人がいたのでは」という印象を観客に与え、鑑賞後に元ネタを検索する流れが生まれています。2022年の公開当時、SNSでも「これ実話?」という投稿が相次ぎました。
第三に、白石和彌監督の作品歴も影響しています。白石監督は『凶悪』(上申書殺人事件がモデル)や『孤狼の血』(広島の暴力団抗争が背景)など、実在事件をベースにした作品で知られています。そのため「白石監督の新作も実話ベースだろう」という先入観が生まれやすい状況です。
第四に、実在の地名や社会問題を作品に取り込んでいることも一因です。生々しい描写がドキュメンタリー的な質感を生み出しており、完全な創作であっても実話と受け取られやすくなっています。
第五に、作品タイトルがキェルケゴールの哲学書『死に至る病』(1849年)を想起させる点も見逃せません。実在の哲学書との接点があるため、物語全体にも実話的な裏付けがあるかのような印象を与えている可能性があります。
こうした要素が重なり、映画の公開直後から「死刑にいたる病 実話」「死刑にいたる病 元ネタ」といった検索が増加しました。作品の完成度が高いほど「実話かもしれない」と感じさせる力が強くなるため、本作のクオリティがかえって誤解を助長しているとも言えます。
モデル説・元ネタ説の有無
ネット上にはいくつかのモデル説が存在しますが、いずれも公式には未確認です。
最も多く見られるのは、アメリカの連続殺人犯ジョン・ウェイン・ゲイシーとの類似を指摘する説です。
ゲイシーは33人を殺害した人物で、地域のボランティア活動に熱心な「善良な市民」として知られていました。子供たちのために道化師の扮装をするなど社交的な一面を持ちながら、裏では凶行に及んでいたという二面性は、パン屋として慕われながら犯行を重ねた榛村大和の人物像と重なります。
また、テッド・バンディとの類似を指摘する声もあります。端正な容姿と弁舌の巧みさで被害者の信頼を得ていたバンディの手法は、パン屋の笑顔で若者との接点を作り、やがて犯行に及ぶ榛村の人物像と重なる部分があります。被害者が若い世代に集中している点も共通点として挙げられています。
日本国内の事件との類似性を指摘する声は比較的少なく、榛村大和の犯行パターン(若い世代を対象とした連続殺人・カリスマ性のある犯人像)は、海外の事件を連想させやすい構造です。モデル説がアメリカの犯罪者に集中するのもそのためと考えられます。
ただし、これらはいずれもファンやメディアが類似性を後から見出したものであり、原作者の櫛木理宇や白石和彌監督が特定の実在犯罪者をモデルにしたと公言した事実は確認されていません。フィクション作品にリアリティを持たせるうえで複数の実例を参考にしている可能性はあるものの、「この人物がモデル」と断定できる根拠はありません。
この作品を見るには【配信情報】
『死刑にいたる病』は複数の主要サービスで見放題配信されています。
配信状況(2026年4月確認)
- Amazon Prime Video:見放題配信中
- U-NEXT:見放題配信中
- DMM TV:見放題配信中
- Netflix:見放題配信中
※配信状況は変動します。最新情報は各サービス公式サイトでご確認ください。
まとめ
判定は「実話ではない」、根拠ランクはC(原作・記録)です。
原作は櫛木理宇のフィクション小説であり、映画にも「実話に基づく」という表記はありません。
連続殺人犯のリアルな描写や白石和彌監督の過去作品のイメージから「実話では?」と誤解されやすい作品ですが、物語と登場人物はすべてフィクションです。ジョン・ウェイン・ゲイシーやテッド・バンディとの類似性を指摘する声もありますが、公式に確認されたモデルは存在しません。
2022年5月の公開以降、本作は高い評価を受けており、白石和彌監督の代表作の一つとして位置づけられています。阿部サダヲの怪演も話題を呼び、多くの観客が鑑賞後に「実話かどうか」を調べる作品として今なお注目を集めています。
今後、原作者や制作陣から新たな発言があれば、本記事の内容を更新いたします。

