映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』の判定は「実在モデルあり」です。
原作者・小野不由美が読者から集めた実際の怪談体験や、北九州の炭鉱にまつわる歴史的背景が作品の着想元とされています。
この記事では、元ネタとなった実在の要素と作品との違いを比較表で検証し、なぜ「実話」と言われるのかについても解説します。
残穢(ざんえ)は実話?結論
- 判定
- 実在モデルあり
- 根拠ランク
- D(有力説だが一次ソース弱)
- 元ネタの種類
- 事件
- 脚色度
- 高
- 確認日
- 2026年4月
映画『残穢』は、原作者・小野不由美が読者から実際に募集した怪談体験を素材に取り入れた作品です。北九州の炭鉱にまつわる歴史的背景も組み込まれており、実在のホラー作家が実名で登場するなど実在の要素を含む作品ですが、「穢れが感染する」という核心設定は創作であり、脚色度は「高」です。
本記事は公式情報・一次発言・原作・報道資料を優先し、俗説は区別して記載しています。
なぜそう判定できるのか【根拠ランクD】
本作の根拠ランクは「根拠ランクD」としています。実在の要素が複数確認できる一方、特定の事件との接続を示す一次ソースが弱いためです。
原作者の小野不由美はかつて執筆していた『悪霊シリーズ(ゴーストハント)』のあとがきで読者から怪談体験を募集していました。寄せられた実際の体験談が『残穢』の素材として活用されたことは広く知られています。原作小説は2012年に新潮社から刊行され、翌2013年に第26回山本周五郎賞を受賞しました。
また、2016年の映画化に際して松竹が配給を担当し、中村義洋監督が小野不由美の原作を映画化する形で制作されました。映画の公式情報では原作小説がベースであることは明示されていますが、特定の実在事件との関連については言及されていません。
作中の「奥山家」の炭鉱事故が特定の実在事件に基づくという公式な明言は確認されていません。北九州の炭鉱史との類似性はファンの間で指摘されていますが、「この事件がモデル」と断定できる一次発言や資料が不十分なため、根拠ランクはDとしています。
元ネタになった実話とモデル人物
本作の元ネタとされる実在の要素は「複数の実在要素」で構成されています。特定の一つの事件ではなく、複数の現実の断片が組み合わされている点が本作の特徴です。
第一に、原作者・小野不由美自身の体験です。作中の語り手「私」は小説家であり、読者から届く怪談体験を取材して作品にするという設定です。これは小野不由美が実際に行っていた読者投稿の怪談募集をもとにしています。映画では竹内結子がこの「私」を演じました。
第二に、北九州・筑豊地方の炭鉱の歴史です。作中では明治期に北九州で炭鉱を経営していた「奥山家」で鉱山事故が発生し、多くの労働者が亡くなったとされています。
その怨念が掛け軸に宿り、穢れとして時代を超えて広がっていくという設定です。筑豊炭田では実際に多数の炭鉱事故が発生しており、こうした歴史が着想元になった可能性が指摘されています。
第三に、実在のホラー作家の登場です。怪談作家として知られる平山夢明と福澤徹三は、小野不由美の知人として実名で作中に登場し、怪異の調査を手伝います。映画でも佐々木蔵之介が平山夢明役、滝藤賢一が福澤徹三役を演じており、リアリティを高めています。
なお、作中の「畳を擦る音」や「赤ん坊の泣き声」などの怪異は、読者から寄せられた体験談のなかに類似する報告が含まれているとされています。ただし、どの体験談がどのエピソードに対応するかは公式には明かされておらず、素材の取捨選択は作者の創作判断によるものです。
作品と実話の違い【比較表】
実在の要素を含みつつも、物語の核心部分には「大幅な脚色」が加えられています。
| 項目 | 実在の要素 | 作品(残穢) |
|---|---|---|
| 語り手 | 小野不由美(実在の小説家) | 「私」(小説家・竹内結子が演じる) |
| 怪談の素材 | 読者から寄せられた実際の体験談 | 久保さんからの手紙がきっかけ |
| 炭鉱事故 | 筑豊炭田で実際に多数の事故が発生 | 「奥山家」の炭鉱事故が穢れの根源 |
| 怪異の連鎖 | 個別の怪談体験(因果関係は不明) | 穢れが感染し時空を超えて拡大 |
| 実在作家 | 平山夢明・福澤徹三は実在 | 実名で登場し怪異調査に協力 |
| 掛け軸 | 該当する実在の掛け軸は未確認 | 奥山家の「婦人図」が穢れを媒介 |
| 結末 | 特定の結末はない | 穢れの根源を辿り真相に到達 |
本当の部分
読者からの怪談募集は著者の実体験です。小野不由美は『悪霊シリーズ』のあとがきを通じて読者から体験談を集めており、『残穢』にはそれらの素材が織り込まれています。
作中で「私」が読者の手紙をきっかけに怪異を調査する構造は、著者自身の経験に基づくものです。小野不由美のもとに届いた体験談は数百通にのぼるとも言われており、その蓄積が本作の土台となっています。
北九州・筑豊地方で炭鉱事故が多発した歴史は事実です。明治から昭和にかけて筑豊炭田では過酷な労働環境のもとで多くの労働者が命を落としました。作中の「奥山家」の設定は、こうした歴史的背景を踏まえて創作されたものと考えられています。
実在のホラー作家が実名で登場する点も現実に基づく要素です。平山夢明と福澤徹三はいずれも実在する怪談作家であり、小野不由美との交流も実際に存在します。
脚色の部分
作中の「奥山家」は架空の存在です。特定の実在する炭鉱主がモデルであるという公式な情報は確認されていません。ネット上では宗像氏の伝説や山田事件との関連を指摘する説もありますが、いずれも推測の域を出ません。
穢れが「感染」するように広がるという超自然的な設定は完全なフィクションです。久保さん(橋本愛が演じる女子大生)のマンションでの怪異体験や、調査で判明する過去の事件の連鎖も物語として構築された創作です。
奥山家の掛け軸「婦人図」が穢れを媒介するという設定にも、実在のモデルは確認されていません。ネット上では特定の日本画との関連を指摘する声もありますが、公式に確認された情報ではありません。
実話の結末と実在人物のその後
本作は特定の実在事件を再現した作品ではないため、「事件の結末」はないという整理になります。ここでは作品に関わる実在人物の現在を紹介します。
原作者の小野不由美は、本作の原作小説で第26回山本周五郎賞を受賞しました(2013年)。『十二国記』シリーズや『ゴーストハント』シリーズでも知られる作家であり、2026年現在も執筆活動を続けています。夫は同じく作家の綾辻行人です。
映画を監督した中村義洋は、『ゴールデンスランバー』『殿、利息でござる!』などで知られる映画監督です。本作ではドキュメンタリータッチの演出手法を採用し、原作のモキュメンタリー的な雰囲気を映像化しました。
作中に実名で登場する平山夢明は、怪談・ホラー作家として活動を続けています。2006年に日本推理作家協会賞を受賞しました。同じく実名で登場する福澤徹三も、怪談実話の収集・執筆で知られる作家として活動中です。
映画で「私」を演じた竹内結子は、2020年9月に急逝しました。本作は竹内結子の代表作の一つとして記憶されています。久保さんを演じた橋本愛は、2026年現在も女優として活躍を続けています。
映画『残穢 -住んではいけない部屋-』は2016年1月30日に松竹配給で全国公開されました。小野不由美原作の知名度と竹内結子・橋本愛のダブル主演が注目を集め、Jホラーの話題作となりました。脚本は鈴木謙一が担当し、坂口健太郎も出演しています。
北九州・筑豊の炭鉱については、1960年代のエネルギー革命により相次いで閉山しました。現在は旧炭鉱跡が産業遺産として保存されており、田川市石炭・歴史博物館や直方市石炭記念館で当時の歴史を知ることができます。
なぜ「実話」と言われるのか
本作が「実話」と言われる最大の理由は、原作小説の「実話風の構造」にあります。
原作小説では語り手「私」のプロフィールが著者・小野不由美と一致しています。小説家として怪談を収集しているという設定や、実在の作家が実名で登場する構成など、いわゆるモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)の手法が徹底されています。
北九州の炭鉱にまつわる歴史的背景が実際の筑豊炭田の歴史と重なることも大きな要因です。「北九州 炭鉱 事故」などで検索すると実在の炭鉱災害の記録が多数見つかるため、作中の「奥山家」にもモデルが存在するのではないかという推測がネット上で広がりました。
映画版では中村義洋監督がドキュメンタリータッチの演出を採用しています。派手なホラー演出を抑え、淡々とした取材形式で怪異を描く手法が「実際の記録なのでは」という印象を生んでいます。
さらに、姉妹作『鬼談百景』が『残穢』と世界観を共有している点も見逃せません。99編の怪談短編を収録したこの作品は『残穢』本編とリンクする話も含まれており、「実話の記録では」という没入感がさらに強まります。
小野不由美自身も本作について「実話とフィクションの間」と述べたとされており、完全なフィクションとも実話とも明言していません。この曖昧な姿勢が、読者・視聴者の間で「本当にあった話なのではないか」という実話説が広まる一因となっています。
この作品を見るには【配信情報】
配信状況(2026年4月確認)
Amazon Prime Video:レンタル・購入
U-NEXT:見放題配信中
DMM TV:見放題配信中
Netflix:要確認
※配信状況は変動します。最新情報は各サービス公式サイトでご確認ください。
元ネタをもっと知りたい人へ【関連書籍】
『残穢』(小野不由美/新潮文庫)― 映画の原作小説。読者から届いた怪談を調査する作家の視点で穢れの連鎖を描くホラー作品。第26回山本周五郎賞受賞。
『鬼談百景』(小野不由美/新潮文庫)― 『残穢』と世界観を共有する怪談短編集。99の怪談が収録されており、『残穢』との併読が推奨されています。

