『ちいちゃんのかげおくり』の判定は「実話ではない」です。あまんきみこによる創作児童文学であり、特定の実話に基づく作品ではありません。
作者自身が旧満州で戦争を体験しており、その記憶が物語の着想に影響を与えていますが、主人公ちいちゃんや家族は架空の人物です。
この記事では、実話ではないと判定できる根拠を整理し、なぜ「実話」と誤解されるのかについても検証します。
ちいちゃんのかげおくりは実話?結論
- 判定
- 実話ではない
- 根拠ランク
- C(原作・記録)
- 元ネタの種類
- なし
- 脚色度
- ―
- 確認日
- 2026年4月
『ちいちゃんのかげおくり』は、あまんきみこが1982年にあかね書房から出版した創作絵本です。作者自身は旧満州・大連で終戦を迎えた戦争体験者ですが、物語の主人公ちいちゃんやその家族は架空の人物です。特定の実話や事件をもとにした作品ではなく、公開情報ベースでは実話であるという根拠は確認できません。判定は「実話ではない」です。
本記事は公開されている情報をもとに編集部が独自に検証したものです。新たな情報が確認された場合、内容を更新することがあります。
なぜそう判定できるのか【根拠ランクC】
原作があまんきみこによる創作児童文学であり、実話に基づくという公式情報が存在しないため、根拠ランクはC(原作・記録)としています。
本作はあかね書房「あかね創作えほん」シリーズの第11巻として刊行されています。出版社の分類上も「創作」に位置づけられており、実話を元にした作品であれば「ノンフィクション」や「記録文学」として分類されるのが通常ですが、本作にそうした表記はありません。
光村図書の小学3年生国語教科書にも長年にわたり収録されていますが、教科書の指導資料においても本作は「物語文」として扱われています。「実話に基づく」「ノンフィクション」といった注記は確認されていません。
また、あまんきみこ自身も慶應塾生新聞のインタビューで、本作について「書かずにはおれない思いだった」と創作の動機を語っています。特定の実話を再現したとは述べておらず、自身の戦争体験を経て生まれた創作作品であることが読み取れます。
実話ではないと考えられる理由
原作・出版情報・作者発言のいずれにおいても、実話との接点は確認されていません。
第一に、本作はあまんきみこによる創作絵本です。出版社であるあかね書房は本作を「あかね創作えほん」シリーズに分類しており、実話やノンフィクションとしては扱っていません。
第二に、物語の主人公であるちいちゃんは架空の人物です。特定の実在する子どもをモデルにしたという情報は、公式・非公式を問わず確認されていません。ちいちゃんの家族構成も作者の創作です。
第三に、物語の舞台となる具体的な地名は作中に登場しません。空襲を受けた日本のどこかの街という設定であり、特定の空襲事件を再現した物語ではないことがわかります。
第四に、作者あまんきみこ自身が本作を「創作」として位置づけている点も重要です。作者は自身の戦争体験が創作の原点にあると語っていますが、「実話を書いた」「実在の人物をモデルにした」といった発言は確認されていません。1983年に小学館児童出版文化賞を受賞した際にも、フィクションの児童文学作品として評価されています。
ではなぜ「実話」と誤解されるのか
作者の実体験・リアルな描写・教科書への収録など、複数の要因が重なり「実話では?」という誤解を生んでいます。
最大の要因は、作者あまんきみこ自身が戦争体験者であることです。あまんきみこは1931年に旧満州(現在の中国東北部)の大連で生まれ、女学校2年生の時に終戦を迎えています。子ども時代に実際に「かげおくり」をして遊んでいたことも公言しており、作者自身の体験と物語の内容が重なる部分があるため、「実話に違いない」と受け取られやすくなっています。
第二に、「かげおくり」という遊び自体が実在する点があります。地面の影をじっと10秒ほど見つめてから空を見上げると、影の残像が空に映って見えるという遊びです。戦時中にも子どもたちの間で行われていました。遊びが実在するため、物語全体も実話であるという印象を与えている可能性があります。
第三に、空襲の描写が非常にリアルである点です。焼夷弾による空襲で街が燃える様子、家族とはぐれる混乱、防空壕での避難といった描写は、実際の戦時下の出来事として多くの証言が残されています。フィクションであっても「本当にあった話」と感じさせるだけの描写力があります。
第四に、小学校の国語教科書に長年掲載されていることも影響しています。光村図書の小学3年生の教科書教材として1980年代から継続的に採用されており、日本人の多くが子ども時代に授業で触れた作品です。教科書に載っている=事実に基づく話、と受け取る読者も少なくないと考えられます。授業で戦争について学ぶ文脈で読むため、実話としての印象がさらに強まっている可能性があります。
第五に、戦争を題材にした児童文学の中には実話に基づく作品も多いため、同ジャンルの作品と混同されやすいという背景もあります。『はだしのゲン』や『ガラスのうさぎ』など、作者自身の体験を描いた作品と並べて語られることが多く、本作も同様に実話ベースであると誤解されやすくなっています。
モデル説・元ネタ説の有無
ネット上にはいくつかの説が存在しますが、いずれも公式には未確認です。
あまんきみこが自身の戦争体験を着想源にしていることは公言されています。旧満州・大連での生活や、子ども時代に「かげおくり」をして遊んだ記憶が物語の原点にあることは複数のインタビューで語られています。ただし、これは創作の着想源であり、「実話をそのまま描いた」ということではありません。
興味深いことに、あまんきみこは当初「なみこちゃんのかげおくり」「ちいちゃんのかげおくり」「せんこちゃんのかげおくり」と、親子3代にわたる影送りの物語として構想していたことが知られています。これは作者の創作構想であり、実在の家族3代をモデルにしたものではありません。最終的に「ちいちゃんのかげおくり」のみが作品として完成しました。
また、ちいちゃんのお父さんが出征前に家族で「かげおくり」をする場面は、作者自身の記憶にある「かげおくり」遊びが反映されていると考えられますが、特定の家族や出来事を再現したものではありません。物語全体は、あまんきみこが戦争体験を経て創作したフィクションです。作者の体験が創作に反映されていることと、作品が実話であることは別の問題であり、この点を混同しないことが重要です。
この作品を読むには【入手情報】
『ちいちゃんのかげおくり』は書籍・教科書・教育DVDで入手できます。
『ちいちゃんのかげおくり』の入手方法(2026年4月確認)
- 書籍:あかね書房より発売中(あかね創作えほん 11)
- 教科書:光村図書 小学3年生 国語教科書に収録
- 教育DVD:教配(きょうはい)より学校・図書館向けに販売
- Amazon:書籍の購入可
※本作は児童文学(絵本)のため、一般的な動画配信サービスでの配信はありません。
まとめ
判定は「実話ではない」、根拠ランクはC(原作・記録)です。
あまんきみこによる創作児童文学であり、実話に基づくという公式情報は存在しません。
作者自身が旧満州での戦争体験者であること、「かげおくり」が実在の遊びであること、空襲の描写がリアルであることなどが複合的に重なり、「実話では?」という誤解が生まれています。しかし、主人公ちいちゃんは架空の人物であり、特定の実話や事件をもとにした物語ではありません。
本作は1982年の出版以来、小学校の教科書教材として40年以上にわたり読み継がれている名作です。今後、作者や出版社から新たな情報が公開された場合は、本記事の内容を更新いたします。

